公開日:2015年12月4日

ユーロ圏の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)は、追加の金融緩和を発表しました。その内容を確認しましょう。また、その後のユーロの急上昇の理由を考えましょう。

 

政策金利発表後のドラギ総裁記者会見の概要

・ 以下の5点について決定した。
(1)政策金利を0.05%で据え置く。中銀預金金利をマイナス0.3%に引き下げる。
(2)非伝統的な金融政策に関し、毎月600億ユーロの購入を少なくとも2017年3月末まで継続する。
(3)満期となった債券の資金を再投資する。
(4)ユーロ圏の地方政府発行の債券も、購入プログラムの対象に含める。
(5)リファイナンシング・オペの諸条件を継続する。

 

簡潔な分析

ドラギ総裁の記者会見では、上の概要に続いて現在の経済情勢分析が話されました。そこでは、経済の回復が続いているが期待されるほどではないこと、消費者物価指数上昇率が低いこと、地政学的リスクを含めて下向きリスクがあることが述べられました。

今回の政策を反映した結果、ユーロシステムのスタッフによる実質GDP成長率予想は以下の通りとなっています。2015年9月の見込みと概ね変わりありません。
2015年 1.5%
2016年 1.7%
2017年 1.9%

また、インフレ率の見通しは以下の通りです。2015年9月の見込みよりも下方修正されています。
2015年 0.1%
2016年 1.0%
2017年 1.6%

今までの公開情報と比較して、驚くような情報が追加で出されたわけではないと考えます。例えば、エネルギー価格の下落がインフレ率に悪影響を及ぼしていますが、同時に消費者の購買力を引き上げる効果もありますので、中長期的にはエネルギー価格の下落はプラスに寄与するでしょう。

また、インフレ率は対前年比で表しますので、エネルギー価格はいずれ前年比でゼロまたはプラスに復帰します。

今回新しく追加された事項としては、難民問題と地政学的問題があります。ここはECBの所管でないためか、さらっと流しています。しかし、重要なリスクになりかねない問題でしょう。

 

相場に目を向けますと、政策金利発表前から、ユーロを含む通貨ペアの価格変動率がひどく上昇していました。通貨ペアによってはスプレッドもかなり大きくなっていましたので、このときにトレードするのは難しかったかもしれません。

そして、金利発表とともにユーロが急激に強くなりました。例えば、以下の通りです。
ユーロ/米ドル(EUR/USD): 発表前1.06くらい 発表後1.09台半ば(300pipsくらいの上昇)
ユーロ/円(EUR/JPY): 発表前130円台後半 発表後134円前半(400銭くらいの上昇)

金利発表後のわずか半日でこれだけ上昇しています。その割には、発表された内容は事前予想と変わりありません。ユーロ急上昇の理由を確定的に書くことは困難ですが、例えば以下のような理由が考えられます。

・ 前回の政策金利発表後の記者会見で、12月の金融緩和が示唆された
→ 市場が追加緩和を大いに期待した
→ その結果、ユーロが継続的かつ大幅に売られた
→ 12月の政策金利発表を受けて、売っていた筋が買い戻して取引を終了した
→ 買い戻しによるユーロ上昇が大きかったため、当初は買い戻す予定がなかった人も買い戻した
→ 買いが買いを呼び、大幅上昇になった

実際の理由は不明ですが、上のような経路もその一つに挙げられるでしょう。