本日午前のニュージーランドドルの値動きが何か変でしたので原因を探してみると、ありました。ニュージーランド準備銀行のリリースです。
内容を一言で書きますと、「2016年3月にニュージーランド準備銀行は政策金利を引き下げたが、その情報が事前に一部マスコミに漏れていました」ということです。
「株式の世界でインサイダー取引はありうるが、外国為替の世界ではそれはないだろう」という言葉を聞いたことがあります。しかし、それは正しくないことが再び示されました。
漏えい情報を用いてトレードできるなら、小さなリスクで大きな富を得ることが可能になります。その分だけ損失を被ってしまうのは、世界中の善良な市民です。このため、情報の漏えいはあってはならないことです。
上のリリースでも、ニュージーランド準備銀行が遺憾の意を繰り返し表現しています。
では、今回のような疑惑(あるいは漏えいなどの事実)は、過去にどの程度あったでしょうか。有名どころを簡潔に確認しましょう。
過去の漏えい疑惑やインサイダー取引疑惑など
1 スイス国立銀行総裁辞任
リーマンショックの影響が収まらない中、ユーロの信頼度に疑問が持たれ、スイスフラン高が進行しました。ユーロ/スイスフラン(EUR/CHF)の下落は勢いを増すばかりでした。
このため、スイス国立銀行はユーロ/スイスフラン(EUR/CHF)を1.20よりも下げないという政策を採用しました。2011年のチャートは以下の通りです。横に引いた赤線はEUR/CHF=1.20のラインです。
この過程で、スイス国立銀行総裁の配偶者が為替取引で稼いでいました。それは偶然だったのか情報が漏れていたためなのか、真偽は不明です。しかし、インサイダー疑惑となってしまい、総裁は辞任に追い込まれました。
2 米国政策金利情報事前漏えい疑惑
米国の政策金利は極めて重要な情報ですが、漏えい疑惑がありました。2013年のことです。
FOMC(連邦公開市場委員会)による政策金利発表は一瞬で世界中を駆け巡ります。しかし、全世界に同時に情報が伝わるわけではありません。情報は光ファイバー経由で伝わりますので、場所によって極めてわずかですが時間差が出ます。
各業者は政策金利の情報を得てから売買するのですが、光の伝達速度から考えると、政策金利発表前に情報が漏れていたのでは?という例が見つかりました。
その疑惑の時間差は1,000分の数秒という小さなものですが、コンピュータを駆使する取引においては十分な時間です。
私たちにできることとは?
上の例は疑惑であって、確定したわけではないでしょう。LIBOR事件のように、金利が不正に操作された事件もありました。いずれにしましても、私たちにはどうしようもない世界の出来事です。
しかし、その出来事によって私たちは不利益を被っているかもしれません。では、どうしましょうか?
どうしようもないのですが、対策の一つとして「重要指標発表時にトレードしない」という方法があるでしょう。もとより、機関投資家の巨大な取引システムに対抗しようと思っても、速度で負けることは目に見えています。だったら、取引しないでおこうということです。
あるいは、こういった疑惑は仕方がないと受け入れて、指標発表時のトレードに取り組むという方法もあるでしょう。いずれにしましても、この種の疑惑があるという知識を持っておいて損はないでしょう。
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